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アイルランド旅行記 2010 〜キルベガン蒸留所を訪ねて〜 
2010年 5月 6日(木)

受付を済ませて蒸留所に足を踏み入れると、独特の香りが漂っています。

「蒸留所に来たんだ。」と実感します。

そして、ここがただの博物館ではなく、稼働している蒸留所であることを表しています。

 香りはお伝えできませんが....。


石臼

見学の順路を進んでいくと、まず目に留まるのが大きな3つの石臼。

スコットランドの蒸留所のミルは縦型のローラーミルですが、麦芽以外により堅い無発芽の大麦や小麦、カラス麦などを

使用するアイリッシュ・ウィスキーではこのような石臼が必要だったのです。

    

この石臼には20トンの穀物が投入され、外の水車を動力として1分間に115回転する各石臼で処理されるうちに

より細かくなり、なめらかになるよう仕上げられる。


マッシュタン

細かくなった穀物は次にマッシュタンでお湯と混ぜ合わされて麦汁(糖分の溶けだした水;ウォート)を得ます。

こちらには2つの鉄製のマッシュタンがあり、その外周には歯車が回るように溝が施されています。

さらに中心の軸にも複雑に歯車が機能して、レーキがマッシュタン内部をまんべんなくかき混ぜるようになっています。

  

スコットランドで見たマッシュタンにも回転するレーキのようなものはありますが、

このような複雑な、というよりも原始的な仕組みのものは初めてです。




動力源

さて、ウィスキーの製造工程からはちょっと離れますが、先に述べた通り、石臼を回転させる動力や、

あとおそらくマッシュタンの回転するレーキも水車の力を使っています。

  

水車によって動力得ることは安価ですし、大変効果的なのですが、壊れた時や水位が低すぎたり高すぎたりすると

使用できないため、1880年代に動力の代替源として蒸気エンジンが導入されました。



実に機械的なごっつい蒸気エンジンですが、使用されたのは年間3〜4日だったそうです。

ちょっと無駄なような気がしないでもありませんが...。


発酵槽

製造工程に戻ります。

マッシュタンで得られたウォートは次に発酵のプロセスに入ります。

この発酵を行う巨大な桶をスコットランドではWash Buck(ウォッシュ・バック)と呼びますが、こちらでは

Fermentation Vats(ファーメンテーション・バッツ)と呼ぶようです。

  

ここに移されたウォートはイーストが加えられて発酵が始まります。3〜4日発酵は続き得られた液体がウォッシュ。

ウォッシュは泡立ったビールのようなもので、作業員は隠し持った容量1リットルほどのジャム容器を使って

オーナーの目を盗んでは飲んでいたそうで、いろいろな感想を言っていたそうです。


「こんなミルクを出す牛はいない。」    (そりゃそうだ、そもそもミルクじゃないし。)


「この容器1杯分のウォッシュは1ショットのウィスキーと同じくらい効く。」   (なるほど、度数換算するとそんなもんか。)


と、言っていた従業員はこの桶の中で溺れ死んだそうです。  きっと飲みすぎです。


ポットスティル

発酵が完了したウォッシュは次に蒸留釜(ポットスティル)で蒸留されます。



屋外にポットスティルがあるなんて! と思われるかもしれませんが、当然そんなはずはなく。

もともとあった4基のポットスティルは1960年代に売られてしまい、このスティルは展示用にタラモアの蒸留所から

移設したものです。風雨にさらされて表面はすっかり緑青に覆われてしまってます。なんだか可哀そう。

ここでもアイリッシュの伝統である3回蒸留を行っていたそうですが、4基のスティルで3回蒸留というのは

どういう組み合わせでやっていたのか、そもそも初留窯・中留釜・後留釜でサイズやデザインが違ったのか、

資料にないので分かりません。


スピリット・ストア

3回の蒸留によって得られたアルコールは”ファースト・ショット”と呼ばれ、一旦スピリット・ストアと呼ばれるブルーに

塗られた大きな容器に蓄えられます。ブルーに塗られるというのは税関によって定められていて、課税前であることを

表しているそうです。

  

ここで仕込み水を加えて適正度数までアルコール度数を下げて樽詰めされます。

その過程は税関職員が間近にチェックしていて樽の重さや数を記録して熟成庫に運ばれます。

最低5年間の熟成が義務付けられていましたが、ロックス蒸留所では多くを12年以上熟成させていたそうです。

熟成したウィスキーは樽ごと売られるか、陶器製のジャーで売られていて、瓶詰めのウィスキーが普通に流通するのは

ごく最近になってからのことです。


さて、ここまでは「ロックス・ウィスキー・ミュージアム」としての展示で過去のウィスキー作りの様子を見てきた訳です。

最後に復活したキルベガン蒸留所としての蒸留の様子です。


スティル・ルーム

2基ある銅製のポットスティルは旧キルベガン蒸留所の250周年記念として2007年5月に設置されたものです。

これらは1800年代の前半に作られ、タラモアの蒸留所で使用されていたもので、現在使用されているポットスティル

としては世界最古のものになるそうです。

前にも述べたとおり、新しいクーリー蒸留所で最初の蒸留を行ったスピリッツをここまで運んできて、このポットスティルで

2度目の蒸留を行っています。



とても変わった形状のポットスティルで、サイズも小さく、こんな形のものは見たことがありません。

大きさはこんな感じです。

この時も蒸留が行われており、写真ではちょっと分かりづらいですがスピリット・セーフから蒸留液が流れています。



スピリット・セーフ(金庫)はその名の通り通常は鍵が掛かっているのですがこの日はふたが開いておりました。

聞いてみると、今日は税関職員が検査に来ているからだとのことです。



一通り見学を終え、大変充実した気分でした。

帰りは当然タクシーを呼んでもらい、タラモアの町まで10分で到着です。


当初はダブリンに戻ってから夕食のつもりでしたが、こじんまりした雰囲気のタラモアの町が気に入ったので

タクシーの運転手にお勧めの店を聞いて食べて帰ることに。

アイルランドの伝統料理を勉強すべきなのですが、そろそろ旅の疲れも溜まってきており、また運転手の方が

スリランカの出身だったということもあって、インド料理の店に。

疲れてくるとスパイスの効いたものが食べたくなるんですよね。

どぼどぼと泡を立てて注ぐのがインド流?

カメラを気にせずがっついてます。お腹がすいているのでご勘弁下さい。

〆にアイリッシュ・コーヒーもいただきました。


ダブリンに戻って、今夜はアイルランド最後の夜ということでパブ巡りに繰り出しました。

この晩は木曜日だったのですが、夜の街は大変賑わっておりました。ハナモクなのでしょうか?(古い?)

店の外まで人があふれてます。店内は禁煙というのもあるかもしれません。

店内はこんな様子。注文のためカウンターに行くのに一苦労です。

何軒行ったか定かではありませんが、最後(の方)に入った店のカウンターにはビールのタワーがずらっと。

ハイネケン、フォスター、カールスバーグなど他国のビールも目につきます。

そして、この店の2階からは音楽が聞こえてきて、どうやらライブ演奏をやっているようです。

上がってみると、ライブも終盤だったようで結構盛り上がっていました。

http://www.youtube.com/watch?v=0BNovVcMLVs

そして、ライブは終了と思っていたのですが、音楽好きのアイリッシュはまだ終われないようで、奥の方にいた女性が

周りの友人達に乗せられて歌いだしました。

http://www.youtube.com/watch?v=RxZcqGgkLCo

素敵な歌声でした。


さて、これで帰ったような気もするし、もう一軒くらい行ったかも知れませんが、とにかくアイルランド最後の夜は更けました。


明日はフランスです。




                                                   フランス篇はこの後すぐ?

今宵はシングルモルトというチケットを片手にブラウンジャグからスコットランドへ旅立ちませんか?
旅の行程はアテンダント(バーテンダー)にご相談下さい。

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